バックアウトサイドエッジ

ひと言で言うと

後ろ向きに滑りながら、ブレードの小指側の縁に乗るエッジ。ジャンプが最後に降りてくる、着地のエッジです。

正しくやる

前向きのアウトとインを覚えたら、次は向きが変わります。後ろへ進みながら小指側の縁だけに乗るのがバックアウトサイドエッジで、右足ならRBO、左足ならLBOと略します。

ここで、フォアアウトサイドの記事で覚えたことが一度ひっくり返ります。同じ右足の同じ縁に乗っているのに、氷に残る弧が軸線の反対側に出るからです。

米国連盟の連続エッジの課題図が、それをそのまま描いています。アウトの2つの段(フォアアウトとバックアウト)は、どちらも軸線の左端から出発して右へ進む同じ形。それでいて、フォアではRFOが軸線の上、LFOが下。バックではRBOが下、LBOが上。上下がそっくり入れ替わっています。

からくりは進む向きです。傾ける側は変わっていません。どちらも体の外側、小指側へ倒れている。変わったのは、その傾きが決めた円のまわりを自分がどちら回りに動くか、それだけです。

軌跡はどちらも左から右へ伸びる 軸線 RFO 前向きに進む RBO 後ろ向きに進む どちらも右足の小指側の縁に乗っている。 進む向きが変わると、弧は軸線の反対側に出る。
同じ右足の小指側の縁でも、前向き(RFO)と後ろ向き(RBO)では弧が軸線の反対側に出る

練習の型は前向きと同じ連続半円です。米国連盟のテストは、静止した状態から4〜6個の半円を軸線に沿って並べる課題で、フォアのアウト、フォアのイン、バックのアウト、バックのインの順に行う、順序は入れ替えてはいけない、と課題文に明記されています。バックのアウトは3番目。日本のバッジテスト初級も同じ並びで、岐阜県スケート連盟が公開している課題表では「ハーフサークル RBO-LBO」が3番目にあります(2017年10月1日施行の内容で、2018-19シーズンまで改定なしと注記されています。現在も同じかは未確認)。

軸線 静止から RBO RBO LBO LBO 足を替える 体は左を向いたまま、背中から右へ進む
バックアウトサイドエッジの連続半円。RBOは軸線の下、LBOは上に弧が出る

フォアのあとに置く、という順序は各国で共通しています。Skate CanadaはフォアのエッジがアセスメントのSTAR 1、バックのエッジがSTAR 2で、1つ級が上。米国の入門課程でも、フォアのアウトとインがBasic 4、バックのアウトとインがその次のBasic 5です。この並びは2011-12年版でも、6級制に再編された現行のLearn to Skate USAでも変わっていません。大人向けの課程も同じで、Adult 5のA項目がバックアウトサイドエッジです。

後ろ向きが怖いのは、ごく普通のことです。大人向けの解説サイト(スケート用品店が運営するガイド)は、怖さの理由を5つ挙げています。進む先が見えないこと、動きが自然に感じられないこと、後ろに倒れて頭や尾てい骨を打つのが怖いこと、前向きに比べてコントロールを失う感じがすること、そして前向きで覚えたことが何もかも逆になること。対処として挙がっているのは、最初は柵につかまること、混んでいない時間に練習すること、肩越しに何度も後ろを見ること、最初は誰でもぎこちないのでそれを受け入れること。同じページの別の項には、見続けずにちらっと見るだけで足りる、とも書かれています。

ただ、カリキュラムを見ると、この怖さへの答えはもっと前から用意されています。現行のLearn to Skate USAでは、Basic 1で後ろ向きのウィグル、Basic 2で後ろ向きの両足グライドと後ろ向きのスウィズル、Basic 3で後ろ向きの片足グライドと後ろ向きのスノープラウストップ、Basic 4で後ろ向きのハーフスウィズルパンプとバックの片足グライド。バックアウトサイドエッジのあるBasic 5に着くまでに、4つの級ぶんの助走があります。後ろ向きに慣れる作業と、エッジに乗る作業は、はじめから分けて配られているわけです。

エッジそのものの要点として、コーチのJoan Orvisがまず挙げるのは腰です。以下はコーチ向けサイトiCoachSkatingが彼女の動画につけた紹介文からの引用です(動画本体は会員限定)。フリーヒップ(浮かせている足の側の腰)を前に押すこと。押さないまま、腰が開いた状態でバックアウトサイドエッジを覚えるスケーターが多すぎる、と彼女は言います。原文は「覚えることを許されている」という受け身で、指導する側の問題として書かれています。開いた腰の位置は、エッジのコントロールを本来よりずっと難しくする。逆に、最初から腰を閉じた形で正しく覚えれば、多くのスケーターはジャンプで腰の位置の問題を起こさずに済む。

押したあとの形も具体的です。フリーヒップを前に押し、フリーフットも前に置く。滑走している側の上に乗っている感覚を作る。そこから、腰を動かさずに足と腕と頭を動かせるようにする。初期姿勢に入らせて足だけを動かさせ、腰も腰以外も動いていないと本人に感じ取らせる、という手順まで示されています。

バックアウトサイドエッジの姿勢を横から見たところ。背中の向きへ進みながら、フリーヒップとフリーフットは前に置く
バックアウトサイドエッジの姿勢を横から見たところ。背中の向きへ進みながら、フリーヒップとフリーフットは前に置く

頭の向きにも決まりがあります。Moves in the Fieldを専門にするKaren Olsonは、頭を円の内側に向けたままこの動きを教え、ローブが変わったところで新しい円の側へ切り替えます。

合格の線引きも文書にあります。Skate CanadaのSTAR 2「Backward Edges」は、軸線の上でバックのエッジを最低4本、アウトとインの両方を含めて滑る課題です。静止からBOかBIのどちらかで押し出し、氷の反対側まで行ったら残りのエッジで戻ってくる。プッシュはブレードで行い、必須要件は「4本中3本がエッジの定義を満たすこと」。フォアのSTAR 1が軸線の取り方に条件をつけていないのに対して、バックのSTAR 2は「氷の幅を横切る線を軸に」。長辺ではなく短辺、距離の短いほうです。

突き詰める

8つあるエッジのなかで、このエッジだけが持っている立場があります。ジャンプが降りてくる場所だということ。ただしこれ、規則の明文で決まっているわけではありません。

ISUのテクニカルパネル・ハンドブックに載っているのは、間違ったエッジで降りたときの扱いのほうです。現行版(2025-26)は、間違ったエッジに着氷しても技の判定は変わらない、ただしジャッジがGOEに反映する、と書いています。正しいエッジがある前提なのに、それが何かはどこにも書かれていない。ルッツがバックアウトサイドから、フリップがバックインサイドから踏み切るという踏切側の区別は、はっきり載っているのですが。

10年ほど前の版には書いてありました。2014-15年版の「コンビネーションやシークエンスの最後のジャンプ、および単独のジャンプは、バックアウトサイドエッジに着氷しなければならない」という一文です。ただしこの版は表紙に未確定版と明記されたもので、現行版ではこの文ごと消えています。競技規則本体(2026年6月版)にも、シングルのジャンプの着氷エッジを定めた条文はありません。

明文が消えても、指導の側は変わりません。米国の入門課程は項目名にその言葉を残しています。2011-12年版のBasic 7-Dは「バッククロスオーバーからバックアウトサイドエッジのグライドへ(ランディングポジション)」。カッコの中が着氷姿勢です。現行版でも項目名は一字も変わらず、Basic 6を終えて入るPre-Free Skateの2番目に置かれています。同じ動きが1つ上のMoves in the Field(Preliminary 6)にも出てきて、そちらを教えるKaren Olsonは、これを「バッククロスオーバーからランディングポジションへ」と呼び、着氷姿勢を作ることがこのパターンを教える主な目的の1つだと言っています。バックアウトサイドエッジは必ずしも着氷姿勢である必要はないが、着氷姿勢にもなりうる、頭のコントロールも含めて、という言い方です。

Orvisが腰にこだわる理由もここにあります。彼女はバックエッジの解説の冒頭で、バックアウトサイドエッジは多くのジャンプに影響すると強調します。良いルッツ、ループ、アクセル、トウループを跳ぶには、良いバックアウトサイドエッジが要る。腰の位置は、エッジの段階で決まってしまう。

降りてくるのはジャンプだけではありません。Skate CanadaのSTAR 1には、フォアインサイドのC Step(かつて同連盟の評価表でモホークと呼ばれていた技の現行名。米国連盟は今もモホークと書きます)の課題があり、その定義は「フォアインサイドのC Stepに続けて、同じローブの上でバックアウトサイドエッジ」。BIエッジから反対の足に踏み替えてBOエッジに乗り、軸線までそのエッジを保つ。ローブの前半でC Stepを行い、後半をBOエッジの保持に充てるのが狙いだ、とも書かれています。フォアインサイドの記事で、インサイドは技の入口だと書きました。その技が出ていく先が、ここです。同じ形は米国側にもあります。現行カリキュラムのFree Skate 2にあるワルツスリーは、括弧書きで「フォアアウトのスリーターン、バックアウトサイドエッジのグライド」と定義されています。

級が上がっても役割は変わりません。米国連盟のPreliminary 6は「バッククロスオーバーからバックアウトサイドエッジへ」を交互に4〜5ローブ並べる課題で、評価の焦点はパワーと伸び。Pre-Juvenile 5のバックサークルエイトは、バックアウトで8の字を描いたあと、バックインで同じ円をなぞり直します。フォアのサークルエイトと同じ構造が、向きを変えてもう一度出てきます。

このパターンでよく出る失敗を、コーチのKate Charbonneauは2つ挙げています。ローブの大きさが揃わないこと。もう1つは、クロスオーバーを長く持ちすぎて、バックアウトサイドエッジを保つ時間が足りなくなること。彼女は1から4のカウントを使います。1でクロスオーバーの最初の押し、2でアンダーカット、3でローブの頂点からバックアウトサイドエッジへ押し戻し、4までそのエッジを保つ。Olsonのほうは、浅いローブでは力が作れないと言います。エッジの深さが足りないローブは、フラットに近いぶん推進力にならない。

前向きのエッジが出発なら、これは帰着です。ターンを回って踏み替えてきた体も、ジャンプから落ちてきた体も、最後はこの1本の縁が受け止める。軸線に沿って半円を並べるだけの地味な練習が、いちばん派手な技の着地面を作っています。

参考文献

  1. 2023-24 U.S. Figure Skating Rulebook(Skating Skillsテストパターン)
  2. U.S. Figure Skating Basic Skills Program 1-8(2011-12年版)
  3. Learn to Skate USA 2024 Course Information Guide(Sertich Ice Center配布版)
  4. Skate Canada Skills Assessment Resource Guide(2020年11月版)
  5. ISU Judging System Technical Panel Handbook Single Skating(2014-15年版)
  6. iCoachSkating Backward Outside and Inside Edges(Joan Orvis)
  7. iCoachSkating Backward Crossovers to Backward Outside Edges(Karen Olson)
  8. iCoachSkating USFS Preliminary Skating Skills Part 6(Kate Charbonneau)
  9. Adults Skate Too, Backward Skating for Beginners
  10. 岐阜県スケート連盟「テスト内容」(バッジテスト課題2017〜)