深いスウィズル

ひと言で言うと

足を開く幅には上限があります。そこから先を伸ばすのは膝の沈み込みで、1回で進む距離を大きくしていきます。

正しくやる

スウィズルの記事で、足を開く幅には上限があって、広げすぎは失敗の表に載る、と書きました。では大きくするものは何なのか。資料が名指しするのは膝です。

目的

Skate Canadaの入門課程CanSkateに、置き換えられる前の評価チャートがあります。フォアのスカリング(この団体はスウィズルをこう呼びます)の評価項目は2つ。「膝と足首の曲げを示すこと」と「6回以上連続」。幅の指定は説明文のほうにあって、評価項目には入っていません。

ただし2021年4月版の要素表になると、要件は「6回以上連続」の1つだけです。膝は要件欄になく、説明文の中にあります。

Special Olympicsの指導ガイドは、フォアスウィズル5回の課題の手順にこう書いています。「膝を曲げて、より大きな圧とより大きなグライドを作る」。

フィギュアとホッケーを教えるコーチのOlivia Sloanは、個人サイトのブログで、スウィズルを重く見る理由の一つ目に膝を挙げます。「パワーを得るには、強く深い膝と足首の曲げが要る」。シンガポールの公的スポーツ機関のサイトにある署名なしのページも同じです。「スウィズル中の勢いは、膝を曲げて伸ばすことから来る」。

膝と足首の使い方の記事で書いた曲げ伸ばしが、ここでは進む量そのものになります。

やり方

  1. ゴールラインに立つ。かかとを合わせてV字を作る
  2. 膝を沈めながら足を開く。腰幅よりやや広いあたりで止める
  3. 膝を戻しながらつま先を引き寄せ、つま先を合わせて終わる
  4. レッドラインまでスウィズルだけで渡る。何回かかったか数える
  5. 折り返して、帰りの回数を数える

1回が伸びると、回数は減る 進む向きは右。青が左足、桃色が右足。開く幅は上下段とも同じにしてある ゴールライン レッドライン 膝が浅いと、1回が短い。この例で8回 膝を沈めると、1回が長い。この例で5回 回数は一例。行きで数えて、帰りにその数を更新する
1回で進む距離が伸びると、同じ距離を渡る回数は減る。開く幅は上下段で変えていない

手順2の幅は、Learn to Skate USAの公式ブログとSpecial Olympicsの「腰幅よりやや広い」を採りました。CanSkateは「肩幅よりやや広い」で、ここは割れています。

4と5はOlivia Sloanが年上のホッケーの生徒に課しているやり方です。ゴールラインもレッドラインもホッケーリンクの線。「どれだけ力強いスウィズルができるか。そして帰りは行きの回数を更新する」。増やすのか減らすのかは書かれていません。膝が深くなって1回のグライドが伸びれば、同じ距離にかかる回数は減ります。

リズムはCanSkateの課題文どおり、down/up/down/up。閉じ切れない回があってもいい、とOlivia Sloanは書いています。「スウィズルが完結していてもいなくても、その前後の2つのステップが、毎回足が合わさる感覚を刷り込む」。かかとを合わせたV字で始めてつま先を合わせて終わる、その前後の形のほうを毎回通します。

よくある失敗

Special Olympicsのバッジ2の失敗と直し方の表は3行です。トウピック(つま先の刃)が氷に当たる、かかとに乗りすぎている、足を開きすぎている。直し方は順に、もっと膝を曲げさせる、膝を曲げてバランスを保たせる、腰幅に戻させる。3つのうち2つが膝の処方です(表はバッジ2の課題4つ分のもので、スウィズル専用ではありません)。

閉じられないのも定番で、シンガポールのページは「初心者はたいてい、つま先を戻して閉じるところで苦労する」。ここも膝です。「つま先を寄せるのに膝を使うことが大事」。

できたと判定する基準

CanSkateは6回以上連続。フォアがStage 2、バックがStage 3の課題です。

Learn to Skate USAの公式ブログは、Basic 1の合格ラインを「6〜8回連続、間に余計なステップを入れずに」と書きます。

Special Olympicsのバッジ3は「フォアスウィズル5回で10フィート(約3メートル)以上」。バッジ5のバックも同じ10フィートで、距離を条件にしているのはこの資料だけです。ただし回数を決めて距離を測る課題で、このドリル(距離を決めて回数を数える)とは測り方が逆です。距離を固定して数える形は資料にありません。

突き詰める

どこまで沈むかを、公式の課題文は数値で書きません。

CanSkateは膝の角度を数字で書くことがあります。置き換えられる前の評価チャートでは、両足のシットグライドが「膝の曲げは135度から90度」で、これは評価項目にも入っている。ところが同じチャートのスカリングには、説明文にも評価項目にも角度がありません。「膝と足首を曲げる」と「down/up/down/up」まで。

数値を書いた資料は1件だけありました。さきほどのシンガポールのページで、「スウィズル中は、通常より2インチ(約5センチ)氷に近い位置になるはず」。根拠は書かれていません。

深さの代わりに課題文が置いているのは、回数と距離です。だからこのドリルも回数を数えます。

押しているのがどの局面かも、揃いません。

CanSkateの課題文は、開く局面に「下向きに圧がかかる」と書き、閉じる局面は「膝と足首が上がりながら、つま先を引き寄せてスカルを閉じる」で押しの語がない。Learn to Skate USAの公式ブログは逆です。開く局面は「内側の縁を使いながら、両足が離れていく」で押しの語がなく、閉じる局面に「内側の縁に押し込む」と書く。シンガポールのページは冒頭の要約で「内側の縁を使って、両足を外へ、そして内へ押す」と両方に置きますが、詳しい手順に入ると閉じる局面は「膝を伸ばして、つま先を触れさせる」に変わります。

押しの記述は、どの局面にあるか 青が氷や縁を「押す」と書いてある局面。灰色は押しの語がない局面 開くとき 閉じるとき CanSkate 課題文 下向きに圧をかける 膝と足首が上がる Learn to Skate USA 公式ブログ 内側の縁を使って離れる 内側の縁に押し込む ActiveSG 冒頭の要約 外へ押す そのまま内へ押す ActiveSG 詳しい手順 膝をつま先の上へ出す 膝を伸ばして触れさせる
1サイクルのどこに「押す」と書いてあるか。三つの資料で位置が違い、同じページの中でも変わる

足を戻しているだけなのか、そこでもう一度押しているのか。押しているなら、1サイクルで押す回数は倍になります。三つが三つとも違う書き方なので、課題文からは決まりません。

順番についてはコーチの言葉があります。「技術をパワーより先に、が本当に大事」。

「深いスウィズル」という技名は、調べたかぎり英語にも日本語にもありません。本サイトの呼び名です。資料にあるのは「力強くする」「圧とグライドを大きくするために膝を曲げる」という言い方だけ。名前がないぶん、何を深くするのかは滑る側が決めることになります。資料が指しているのは膝のほうです。

参考文献

  1. Skate Canada CanSkate Skills – Descriptions and Performance Standards(置き換えられる前の評価チャート・クラブ控え)
  2. Skate Canada CanSkate Element Descriptions and Requirements(2021年4月版)
  3. Learn to Skate USA Blog Tech Tips – Swizzles(2020年10月9日)
  4. Special Olympics Figure Skating Coaching Guide – Teaching Figure Skating Skills(2006年12月)
  5. Olivia Sloan Skating Swizzle wizzle wizzle(個人コーチのブログ・2025年5月5日)
  6. ActiveSG Circle(Sport Singapore)How to perform a forward swizzle?(署名・公開日なし)